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(注意)本記事は、金剛株式会社が1993年6月18日に発行した機関誌「PASSION VOL.11」の内容を、当時の記録として公開するものです。記事内の情報は発行当時のものであり、現在の状況とは異なる場合があります。また、当時の社会情勢や倫理観を反映した表現が含まれている可能性があり、現代の基準に照らし合わせると一部不適切と感じられる箇所もあるかもしれませんが、資料的価値を考慮し、原文のまま掲載しています。掲載されている商品やサービスは、既に販売・提供を終了している場合があります。
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この度のロジスティクス調査団の訪欧は世界的に不況下の真只中に実施されたので、見方によっては、不況克服のためにも意義深いものがあったと思料します。
小生には初めてのヨーロッパ、訪問国の中ではスイス以外山が少なく休耕地が、やたら目についた。作ればいくらでも穫れる農産物、失業者が多い中、何とか工夫ができないものかと気が急いだ。訪問企業の中でイギリスのディクソン社、ドイツのハゲダ社、オスラム社以外には自動化らしい機器がなく人手による荷役機器の操作、マニュアルピッキングが多かった。中でもスタッカークレーンに女性が搭乗してヘルメットもかぶらずマニュアルピッキングをしていたのには驚愕した。日本では今時考えられない事。8-9メートル高さのパレットラックをフォークリフトで入出庫作業、こんな作業も我が国では少なくなった。一方、床積みフロアロケーションシステムピッキングは羨ましい限り。折りたたみ式を採用せず作業性を優先し、しかもスペース効率の良いロールボックスパレット、それを上手に利用したロケーション管理、21世紀にはロールボックスパレット時代到来を予測する学者もある程で時代の先取り?、パレットは木製が主流、しかも片面、四方差し、ローラーコンベヤー上をスムーズに流れ非常に経済的、 積載物によってはウレタン樹脂(合成ゴム)を緩衝材に使いその上ストレッチ包装で、衝撃、落下を防ぐ物に優しい仕様。オスラム社の自動倉庫、スタッカークレーン5台、高さ32メートルには多少圧倒されたが、我が国でもこの規模なら多くの企業が導入。


ハゲダ社の完全自動ピッキングには目を見張った、500億円の売り上げ8,500万円の経常利益でよくも投資できたと思えるロボット、コンテナ(ボ ックス)を棚から引き出しバキューム (AI付) で所定数ピッキングするアクションは見事といいたい。日本の経営者が採用に踏み切るかは疑問。欧州市場統合で物流コストは10~15%コストダウンと力説されたドクタークーパー氏、廃棄物の処理、環境対策で最終的にはコストダウンは見込まれないとも。交通機関ではアウトパンの左右対向車線の中央を平行して走る電車、電車軌道と夕イヤ式電車軌道を併設した新交通システムの地下鉄、駆け込み乗車ができない自動改札、高速道路を防いだショッピングセンター、車道より広い歩道。トンネルの高さの関係でトレーラーのコンテナを貨車の荷台に載せず貨車と貨車の間に直接牽引して輸送するシステム、いずれも我が国ではお目にかかれない。

ショーケースの裏側より商品を供給して先入れ先売りが可能なロールボックスパレット、カートンをショーケースとしたチョコレート売場、緑色の野菜の間に、赤、黄色の果物を配列して遠くか らでも見分けができる野菜売場。



職場では女性の進出が目立ちスウェーデンでは女性も働かないと生活が出来ない理由で80%が職場に、競争も激しく勉強しないと職につけないと 現地日本人通訳(ガイド)さん、現在の失業者数を勘案すると完全自動化も一考を要す。日本製品。 カメラ、フィルム、家電とやたらに目に入る。 自動車もデザインが優れている理由で近年は人気上昇、価格も現地車並みになったとの事。
訪欧を終えて
目指すは生活大国、宮沢内閣のアドバルーン果して現実のものになるか尺度にも問題あり、現況はほとんどの企業が前年度より減収・減益、そのような非常に厳しい中、訪欧ロジスティクス調査団が協会の熱意により企画され、23名もの研修視察団が編成できたのは大変有意義なものと言えます。資金を作ってでも合理化されるという生産設備とは異なり、物流設備は余剰資金でないと合理化されないと言われる昨今、景気の先行不透明、景気減退、いろいろな難問をかかえている多くの企業の中から、積極性のある企業のトップまたは エリートの方々がヨーロッパの現状を知り、それを知った今回のツアーは非常に実りある、賞賛される研修であったと思料します。
失業者の非常に多い国々でありながら、人と機器の調和、人と自然とのハーモニー、文化遺産等を目の前で見る限り、生活大国日本は平和を続けても200年~300年先にしか辿り着かないような感じがした旅でありました。今後この体験を活かして業界のため、企業のために貢献したい所存です。それ相当の成果をあげたうえ事故もなく全員無事に帰国できましたことは企画された日本ロジスティクスシステム協会の御関係者の皆様、御担当の佐藤修司様、日通旅行の大塚様の御陰です。心よりお礼申し上げます。


(1993年6月18日刊行)