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(注意)本記事は、金剛株式会社が1999年7月30日に発行した機関誌「PASSION VOL.25」の内容を、当時の記録として公開するものです。記事内の情報は発行当時のものであり、現在の状況とは異なる場合があります。また、当時の社会情勢や倫理観を反映した表現が含まれている可能性があり、現代の基準に照らし合わせると一部不適切と感じられる箇所もあるかもしれませんが、資料的価値を考慮し、原文のまま掲載しています。掲載されている商品やサービスは、既に販売・提供を終了している場合があります。
本記事は、著作権法上の引用の範囲内で掲載しています。当時の記録として、皆様に楽しんでいただけましたら幸いです。

九州で初めて物流効率化法の認定を受け、平成 10 年 1月、福岡県糟屋郡宇美町に完成した (協) 西日本物流システムの共同物流センター。
無線LAN、JANコードによる在庫管理、EDIなど、最先端の情報システムを駆使する同センターは、時代のニーズに応える戦略ロジスティクスのモデルケースとして今、各方面から注目を集めている。
組合は、中国・九州地区の百貨店、量販店、大型スーパーなどを得意先とする福岡県内の卸売・物流・運輸業の9社。主な取扱いアイテムは生活雑貨や家庭用品などで約40,000点にも上る。
本稿では、9社が物流共同化に踏み切った背景、人・モノ・情報を効率よく動かすシステムフローにスポットを当ててレポートする。
【経緯】
本計画は、平成4年10月に施行された物流効率化法を機に進展。翌年3月、物流効率化組織委員会 (主催:福岡県中小企業団体中央会) の指定集団となり、中小企業事業団および福岡県の指導を受けながら、約4年半のシステム研究を経て、卸売・物流・運輸の計9社で「協同組合西日本物流システム」を設立した。
国から30億円の高度化資金融資を受け、23,000㎡の敷地に最新の情報システムを導入、平成9年10月に2階建ての共同物流センターを完成した。 それから約3ヶ月間のテスト期間を経て、平成10年1月26日に本稼働に入り、現在に至る。

狙いはローコストオペレーション そして顧客満足度アップ
9社が物流共同化に踏み切った背景として、三越百貨店出店に伴う中央大手卸売の九州進出があった。 以来、福岡地区での競争が一層激化し、得意先より物流サービスの高度化要請、さらには物流コストの大幅削減を迫られるなど、まさに生き残りを賭けた厳しい決断であった。
従ってシステム検討のメインテーマは、いかにしてローコストオペレーションを確立するか、また物流サービス高度化でいかに顧客満足度を高めるか、に照準が絞られた。 その指針として、「入荷から出荷までの全工程を徹底的に標準化・自動化することによりシステムの全体最適化を図る」で取り組むこととなる。
推進に当たっては、物流コンサルタント (サン物流開発・鈴木準氏) の指導を仰ぐと共に、保管・搬送・情報などの専門分野においては、各々の専門メーカーの協力を得て、最大パフォーマンスを発揮するシステムが探られた。
“当たり前”をいかに効率よく回すか
国内物流貨物のおよそ8割は中小企業が支えているといわれているが、近年、消費者のライフスタイルの変化に伴い、多品種少量物流・多頻度小ロット配送など、中小小売を取り巻く環境は極めて厳しいものとなっている。
が、どんなに厳しい環境であれ、お客様の「必要な商品を」「必要な時に」「必要な場所に」「必要な数だけ」「納得して頂ける価格で」提供するは物流に携わる者の使命であることに変わりはなく、お客さま (小売り) にとってのこの“当たり前”をいかに効率よく回すか、さらに“うちだけ”というサービス (特典) をいかにアピールできるかが勝負の分かれ目となる。
西日本物流システムは、「消費者主導型物流」つまりサービスの原点に帰り、お客様のマーチャンダイジング (merchandising) の一役を担い、地域社会に貢献できる物流を目指している。

物流情報ネットワークで 人・モノ・情報を一元管理
本システムは、商品の受発注、入荷・保管、梱包、出荷などの作業管理、在庫管理、値札・納品書・送り状の発行など、あらゆる物流情報を一元管理、庫内作業が一貫したフローで迅速・的確に行え、これまで人手と手間を要していた単品管理も含め、大幅な効率アップにつながっている。
組合各社の端末PCからは情報ネットワークを介して、作業の進捗状況・在庫照会・発注支援などの情報をリアルタイムで活用することもできる。
以下、センターのシステムフローをもう少し詳しく眺めてみよう。


1.荷受け検品
入荷された商品は、入荷荷捌きエリアでJANコードによる荷受け検品を行う。 作業者は予め登録された入荷予定情報と現物とが一致しているかどうか、また数量に間違いはないかなどをチェックし、無線ハンディターミナルで対話操作を行いながら、確認結果をセンターサーバに転送する。
2. 入庫
荷受け検品を終えた商品は、発行される入庫ラベルの指示に従い、1階ケース保管エリア (パレットラック) か2階ピース保管エリア (軽量および中軽量ラック) へ搬送。 入庫作業は商品のJANコードとロケーション (番地) コードをスキャンするだけで、何が・どこに・何個、入庫されたかという情報がセンターサーバへ瞬時に送られる。
入庫はフリーロケーション方式。ガンスキャナでJANコードとロケーションコードを読み取るだけの簡単操作。
組合員からの出荷指示の情報により、ケースピッキング、あるいはピースピッキングを行う。



3.ピッキング
1) ケースピッキングの場合: コンピュータから発行されるピッキングラベルの指示に従って、ピッキングリフトによる効率的なピッキングを行う。
1階ケースピッキングエリアでは、ピッキングリフトを使用。人が荷台とともに昇降するため、常に取り出しやすい高さでピッキングが行える(人間工学に基づいて設計)


2) ピースピッキングの場合: 2階でのピースピッキングは、無線カート端末・値札発行機・バーコードスキャナ等を搭載したピッキングカートを使用。
ピッキングカートとセンターサーバとは常にSS無線で交信、ピッキングに必要な情報 (品名・ロケーション・数量など) がリアルタイムで液晶ディスプレイに表示されるので、その指示通りに作業を行えばよい。
ピースピッキングの情報は全てセンターサーバーから
カート端末にSS無線で送られるため、誰でも短時間の
うちに操作方法がマスターできるという。ちなみに
作業者のほとんどがパートタイマーである。

4.流通加工
各商品エリアにてピッキングされた商品のうち、値札加工など流通加工が必要な商品はコンピュータからの指示に従い、所定の作業エリアで作業を行う。 その後、コンベヤで1階の梱包エリアに流れ、検品・自動梱包・計量を通過し、最終ゾーンへと向かう。

5.仕分け・出荷
コンベヤで次々と流れてくる荷物 (ラベル) を固定スキャナで読み取り、ソータで自動的に行き先ごとの仕分けを行う。 こうして揃った荷物は、送り状や納品書を添付し、トラックに積み込み作業完了となる。


物流共同化によるメリットの数々
現時点での主な導入メリットを上図にまとめてみた。 一言でいうなら、当初の基本構想通り「作業効率化・スピード化=コストダウン化=ノー検品化」はまずクリアしたといえる。
1.作業効率化・スピード化:
2階のカートピッキングで当初の目標75行/hに少しずつ近づき、大きな成果が認められた。
2.コストダウン化:
内部と外部に分けるなら、やはり後者、運送面でのメリットが非常に大きい。 共同配送で7社の貨物をひとつに集約できるため、トラックの積載効率が飛躍的にアップし、走行距離短縮、運送費を大幅に削減した。
3.ノー検品化:
各得意先での納品業務は、駿和物流(株) が代行で行っている。 従来、検品を行うことで手数料を貰っていたが、現在はセンターから出る商品は全てノー検品。 その分、安価になるため、得意先から喜ばれている。
4.その他:
雇用面では、従業員100名のうち、ほとんどがパートでこなしており、誰でも簡単に操作できるメリットは大きい。 わずか、2~3日程度の講習で、即戦力にできるというから驚きである。
言うは易く、行うは難し「物流共同化」成功の秘訣とは?
物流革新・コストダウンが叫ばれ、様々な企業が対応に苦慮する中、物流共同化が注目を浴びている。が、これは企業間の信頼関係が基本であるうえ、各企業の物流サービスレベルの調整といった問題も含め「言うは易く、行うは難し」の典型とも言われている。
確かに西日本物流システムは、4つの同一性が計画推進を大きく支えたとはいえ、事の全てがスムーズに運んだ訳ではない。商品が違えば、コストも売上げ額も違う。細かい作業方法も違うので、よほどうまく歩調を合わせないと難しくなる。各組合各社とも自社を一番ひいきする部分が出てしまうため、各意見を全員納得できるように調整するのはやはり至難の業である。
従って、最終的には全員が一つの目的に向かって心を一にし、情熱を燃やしてはじめて成功への道が開けるのである。
西日本物流システム・物流部長の野元政樹氏は、「我々の仕事は、お客様の商品を大切に扱うことはもちろん、スピードと正確さが命。本格的に稼働を始めて一年以上経つが、目標に向かって一歩づつ着実に前進している。今後とも、各組合員とのコミュニケーションを重視し、分析データを活かしたシステムづくりを推進していきたい」と話す。
(協)西日本物流システム
企業名 | 共同組合西日本物流システム(NBS) |
業種 | 卸売・物流・運送業の計9社で運営する共同物流センター |
所在地 | 福岡県粕屋郡字美町ゆりが丘2-2-11 |
敷地面積 | 23,033㎡ |
建物面積 | 13,090㎡(1階と2階を合わせ) |
稼働 | 平成10年1月26日 |
従業員数 | 約100名 |
(株)タカトー | 陶磁器、輸入食器、インテリアの卸売 |
(株)タジマヤ商事 | 家庭日用品卸売 |
(株)ナカノ | インテリア・ファブリック輸入卸売 |
(株)マナベ | 漆器、木、竹、和紙、家具、工芸品卸売 |
(株)吉安 | 家庭台所用品及び関連用品卸売 |
(株)ライル | 家庭用品。家具インテリア卸売 |
(有)ワーキングオフィス | 生活雑貨企画製造卸売 |
駿和物流(株) | 百貨店代行納品業務 |
駿和運輸(株) | 一般貨物集集荷、配送業務 |
(1999年7月30日刊行)