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(注意)本記事は、金剛株式会社が1999年7月30日に発行した機関誌「PASSION VOL.25」の内容を、当時の記録として公開するものです。記事内の情報は発行当時のものであり、現在の状況とは異なる場合があります。また、当時の社会情勢や倫理観を反映した表現が含まれている可能性があり、現代の基準に照らし合わせると一部不適切と感じられる箇所もあるかもしれませんが、資料的価値を考慮し、原文のまま掲載しています。掲載されている商品やサービスは、既に販売・提供を終了している場合があります。
本記事は、著作権法上の引用の範囲内で掲載しています。当時の記録として、皆様に楽しんでいただけましたら幸いです。
はじめに
今日この高度情報化社会の中でオフィスは「情報の収集・加工・活用の場」であり、日々発生する情報をリアルタイムで整理整頓し、且つ有効的に活用できるしくみが重要となっている。しかし、これまでにファイリングシステムを導入し、更にはモデルオフィスなどの賞をとっているにも関わらず、しばらくすると、そのシステムはいとも簡単に崩れ、うまくいかなくなるというケースも多いという。なぜ、ファイリングシステム導入のメリットを実感する前に継続の限界に達してしまうのだろうか?

ルールが悪いのかそれとも
なぜ崩れるのか?
ファイリングシステムの必要性や、その方法などは 何年も前から取り上げられ、それについてのマニュア ル本も多数出版されている。また、最近では電子メデ イアを活用したシステムなど、ファイリングも進展し ており文書管理も効率的に行われているはずである。
では、なぜうまくいかなくなるのだろうか。システム やルール以外の何かに問題があるのではないか。これまでファイリングに失敗したケースを見てみると、 共通して以下のようなことが挙げられる。
●システム導入後は担当者が、きちんと登録の更新などを 行っているが、時の経過と共に、その担当者がいなくなり、 いつの間にか登録台帳も更新されなくなっていた。
●ファイリングは「面倒な業務」という意識や、そんな事に 時間とコストをかけてもしょうがないという否定的な考え を持っている人が多い。
●自分の業務に差し支えなければそれでいい、関係ないと いった意識を持っている人がいる。
このように、根本的原因は意外にも人系に問題がある と考えられる。
オフィスは情報をためるただの箱ではない
そもそも、人系の問題は今に始まったことではない。 例えば、5S (整理・整頓・清潔・清掃・躾)につい ても、自分の身の回りの整理整頓さえもできない人は意 外に多いものである。
本来、人間とは、そういうものだということを十分にふ まえた上で、なるべくシンプルで誰にでも簡単にできる システムの構築を進めていきたいものである。
しかし、やはりオフィスで働く一人一人が、基本的な ルールや習慣を身に付けなければ、いくら器がよくなっ ても、オフィスは情報をためるただの箱ということにな り兼ねない。
個人で仕事をするならいざ知らず、組織 として仕事をこなす以 上、情報が活かせなく ては意味がないので ある。

成功のキーワードは「熱意・シンプル・フォローアップ」
人系の問題は一人一人の性格・素質の問題でもあるため、完全に解決することはなかなか難しい。
しかし、何らかの方法または努力によって問題を軽減できるのではないだろうか。
一度失敗したが、その教訓を生かしその後成功した ケースから、再構築の際のポイントを挙げてみたい。
ポイント1 ◇熱意を持って根気よく
あるグループのリーダーはファイリングに大変熱心で、 システム自体もうまく運用していた。しかし、そのリ ーダーが異動したとたんにシステムが崩壊したという 例がある。ある程度上からの強制によって進めること はできるが、言われるから渋々やるようでは決して長 続きはしない(トップダウン:図1参照)。
やはり一人一人が自分の業務としてファイリングを 捉え、その必要性を感じた時、初めてファイリングへ の取り組みに主体性が出てくる。
まずは個人のファイリングを固めることが、組織全 体のファイリングシステムの成功への近道となる(ボ トムアップ:図1参照)。
ファイリングの推進は大変な 労力がいる。特にリーダーが意識を持って指導し、メ ンバー全員で意識改革することが大切である。

ポイント2 ◇シンプルで簡単なルール
ファイリングが敬遠される理由の一つとして「ルー ルが複雑であること」が挙げられる。どんなに有効情 報が一元管理されてもルールが守られなければ、情報共有化のためのシステムも宝の持ち腐れになってしまう。 ファイリングの中でルールが複雑になりがちな登録と検索を、簡便に処理する方法として以下が考えられる。
■コンピュータの特性を活かす
【登録】分類・文書名・作成日・作成者など文書に関する様々な情報を入力でき多少のキーボード操作をマスターするだけで誰でも簡単にできる。
【検索】 キーワードを入力するだけで欲しい情報の所 在がすぐに分かる。またキーワードは一般的な用語 から固有の用語(専門用語)まで幅広く入力しておけば、 キーワード入力の際の個人差も解消され、利用者の 多角的な検索ニーズにも対応できる。
■分類方法を単純に
既存のファイル・文書については、その内容を見直し、 更にコンピュータに登録するのは膨大な時間と手間 がかかる。このような文書は●カテゴリ別の大分類、中分類 ●アイウエオ順 等の運用を工夫することによって十分カバーできる。素晴らしいルールを作るのも人、そのルールを破る のも人。せっかくやるなら長続きするものにしたい。
ポイント3 ◇定期的なフォローアップ
いくらシステムが改善されても、その後の維持向上 が難しいのは、前述のように人系が大きく関わってい るためである。しかしシステムの定期的なメンテナンスを行うことで、人系の問題の大部分はフォローすることができる。
例えば、「図書館」がいい例である。
図書館では「読んだ本は元の位置へ戻す」のが原則で あるが、この簡単なルールも守れない人(例えば幼い 子供)がいるのが現実である。
しかし、いくらルール 違反があっても図書館の本が散乱している事はない。それは、職員が本の整理整頓を定期的に行っているか らである。オフィスにおけるファイリングも全く同様で、 運用の仕方を工夫し、定期的なフォローアップを行う必要がある。
より効率的なファイリング
オフィスにおける文書管理では、保存から廃棄するまでの年限を決めていても、なかなかその通りにいかないことが多い。例えば、社内の技術情報を集中管理している部署では、どのような場面で必要になるか分からないような情報があり、捨てるに捨てられない場合も多く、ファイリング担当者を悩ませることも少なくない。
他部門からの情報の要求に対して「判りません、ありません」では済まされない訳で、すぐ必要な書類が出てくるような効率的な文書管理を考えておく必要がある。その一例として
電子媒体を用いた保管方法
図面や画像を含んだプレゼン資料などはボリュームのあるものが多く、大容量でコンパクトな光磁気ディスク等での管理は有効な手段の一つである。電子媒体は 紙媒体のような散逸や品質劣化がなく、ネット上での 共通利用においても大きな利点がある。
移動棚を利用した保管方法
省スペース化により限られたスペースを有効に活用できる 移動棚を利用することで、ゆとりのあるオフィス環境(フ ァイリング)が実現できる。最近では移動棚の機能性やデザイン性もグレードアップしており、オフィス収納家具としても評価が高い。

人に優しい移動棚。女性からの人気も高い

今、時代が求めるものとは
今や情報は、イントラネットやインターネットをはじめワールドワイドで瞬時に飛び交う時代である。
さらに近年は、ISOや情報公開法など時代の要請に伴い、必要時に必要情報を即座に入手することが求められている。
近年のコンピュータの高性能化や情報ネットワーク の普及により、電子媒体を利用したハイテクファイリ ングも注目を浴びている。
これからもファイリングシステムが電子化の方向に着 実に進んでいく事は確かであり、特にネットワークに おけるセキュリティ問題には十分な対策を考えておく必要がある。

電子化による利点
スペースセービング:電子媒体を活用した情報管理によって、オフィスの 過密化の原因である文書情報を減らし、オフィス空間を確保することで、執務環境の改善が図れる。
情報伝達スピードUP:ネットワークを構築することで、遠隔地、他部門へ の情報伝達のスピードUPを実現し、情報の共有化・ 活性化につながる。
情報検索スピードUP:紙台帳による検索(台帳→キャビネット→ファイル ページめくり→目的情報)から電子メディアを活 用したダイレクトな検索方法 (キーボード操作→目的情報)の実現により、ペーパーワークが軽減し、 業務の効率化が図れる。
紙と電子の特性統合
電子化が進み、電子媒体による事務処理がますます 便利になり普及しているにも関わらず、紙との縁が切 れないのはなぜだろうか。今まで慣れ親しんできたことや、OA機器のような操 作技術を必要としないことの他に、●持ち運びが便利である ●手軽に作成・閲覧できる●簡単にメモ書きやコピーができる 等、紙の特性によるところが大きい。
闇雲に電子化を進めるのではなく、このような紙媒体と電子媒体の特性を見極めた上で、状況に応じた使 い分けをしていきたいものである。また、これからは「紙と電子媒体の統合システム」という 新しい観点でのアプローチも、将来ファイリングを進める上で有効になるのではなかろうか。
ビジネスはスピードが命
今までにない斬新なものを一から創出することは至 難の業である。しかし、ビジネスはスピードが命。世界中のネットワーク上に存在する情報から、必要なものを的確に探し当てるセンスが特に重要である。情報化社会では、より多くの役立つ情報をいかに収集できるかにかかっていると言っても過言ではない。
そして、手に入れた情報をいかに料理し、オリジナリテ ィを加えて新しい価値を創造できるかがポイントである。その為にも、ただ情報を待つばかりでなく、自分の持 つ情報を積極的に公開していくことが情報収集の近道となる。
チームワークで差をつける!
様々な文書や情報を数多く保有するオフィスにおいて、 どこに何があるかは、そこで働くメンバー全員が最低 限知っておかなければならない。 また、人系の問題については、
- 熱意を持って根気よく
- シンプルで簡単なルール
- 定期的なフォローアップ
後工程がお客様なら、ファイリングにおけるお客様は、将来その情報を必要とする人。それは時として、自分 自身でありチームメイトであることを自覚しなければ ならない。ファイリングは全員が同じ意識を持っては じめて大きな成果が出るものである。
これら3つのポイントを実行し、特にフォローアップ で刺激を与え続けることが重要である。
これからも加速し続ける情報化の時代。
めまぐるしく飛び交う情報に対して迅速な判断、対応 ができるためにもチームワーク・情報の共有化 がますます大切になってくる。
このように、企業活動の焦点がハードからソフトへ上移り変わっている今、オフィスは知的生産の場とし て大きな役割を担っている。また、そこで働く一人と して、いま改めて「情報」の重要性を見直す時期ではな いだろうか。企業の貴重な財産である「情報」。
この 情報をチームそして組織の為に、更にはお客様の為に、どう活かすかが重要であり、又常に人系の問題を考慮していく事が、システム成功の鍵といえよう。
(1999年7月30日刊行)