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寄稿:堀之口 廣教さん(九州大学附属図書館伊都地区図書課 課長)
九州大学伊都図書館では、平成18年1月、図書館スペースの有効利用と効率的な運用を図るために自動書庫システム(収納可能冊数40万冊)を導入し、平成20年10月に増設工事(収納可能冊数計80万冊)を行い、実運用している。
館内の様子
開架閲覧室
エントランスプラザ Q-Bridge
1.九州人学における運用方法と利用状況
本学における格納方法、入庫状況および利用状況は次のとおりとなっている。
- 格納方法:入庫資料の管理については、原則としてフリーロケーションを採用し、一部、セットものの参考図書など、複数冊を同時に利用する可能性が高い資料については、固定ロケーションを採用している。
- 入庫資料:製本雑誌、重複図書や出版年の古い図書、旧版の参考図書等。
- 入庫冊数:約387,000冊 雑誌56%、図書44%(2010年9月現在)
- 利用状況:1日平均出庫冊数 約20冊(出庫率:雑誌79%、図書21%)
2.自動書庫を運用してみて
①運用による利便性について
- 並びを気にせず入庫できるため、請求記号のない資料や本学の様々な分類体系の資料も再分類や装備の手直しをすることなく入庫、管理することができる。
- A5判サイズ以下の資料入庫に際しアタッチメントの追加購入により、ダブルコンテナからトリプルコンテナヘのコンテナ種別の変更が容易にでき、収納効率を上げることができる。
- 入庫、取出し時の資料の厚さ自動計測によるコンテナの空きスペース管理により効率的な格納ができる。
大学移転事業として、図書館の増築、資料移転作業を進めるなかで、自動書庫の利便性のみでなく、資料配架や書架整理および蔵書点検作業の大幅な省力化により、業務量の縮減が図られ、人員配置の見直しを行うとともに新たな利用者サービスの展開や移転をスムーズに行うことができた。
②運用に関わる業務の見直し
自動書庫の運用を開始し、前述の利便性と業務量の縮減のほか、いくつかの従来の運用方法変更によりさらなる業務改善、効率化を図った。
- 資料IDラべルの貼付位置を表紙に変更することにより、入庫およびカウンター業務の効率化を図った。
- 1つの巻が分冊製本された雑誌について、分冊ごとに収録ページをDBに入力することにより、出庫に際し対象資料を特定できるようにし利便性を向上させた。
- 学部間、キャンパス間での重複資料を入全体として、書庫の狭溢イヒ解消やデリバリーによる資料の共有化を図った。
③問題・課題への対応
運用開始後、いくつかの問題点があったが、システムの変更、トラブル回避策により、現在、安定的な運用を行っている。
- 埃対策:資料に付着している埃によるトラブルが発生していたが、新規入庫時の埃とりの徹底により解決した。
- 荷重制限:洋書製本雑誌で1冊が4~5kgある資料等があり、耐荷重を超えるコンテナが発生した。メーカーとの協議により、増設時に重量計測システムを組み込んだ結果、重量チェックが可能となりスムーズな入庫が行えるようになった。
- 図書館システムとの連係のため、新規格納資料か既存格納資料かを識別する必要があったので、増設時に入庫資料の新既別をチェックし、出納ステーションPCに表示する機能を持たせた結果、入庫後の後処理の有無が容易に認識できるようになった。
- トラブル時は、迅速なテレメンテによる原因調査と指示による復旧作業等により予想以下の利用停止時間で運用できている。
④利用者サービスの変化
- 蔵書検索システム(OPAC)との連動により、検索結果から人手までの大幅な時間節約ができるため、自動書庫入庫に否定的だった利用者も、開架書架に同一資料があっても、自動書庫から出庫するケースがみられ、利用者によっては、出庫までの待ち時間に開架書架の別の資料を探したり、別の資料を複写したりなど、有効に時間を使っている。
- ILL*業務においては、蔵書検索結果から出庫までの時間短縮により、文献複写業務の受付から発送までの迅速な対応ができるようになった。*Inter Library Loan (図書館間相互協力)
見学窓からの自動書庫
出納ステーション
3.今後の課題
①大学としての課題
- 自動書庫内の最適な資料保存環境の調査・分析と維持管理。
- 自動書庫を核の1つとした全学図書館の資料共有・共同保存のしくみの形成。
- ブラウズできない図書に対し、出版情報と連携した資料内容説明附加による利用者サービス機能の充実。
②メーカーへ要望したいこと
- 導入、維持・管理、運用、資料保存や建築、環境について、自動書庫導入検討図書館に対する個々の提案やアドバイス。
- 定期点検・部品交換等の維持経費縮減と安定稼働の方策。
- 将来的な技術革新に伴う既存システム更新による機能の充実。
自動書庫が図書館の有用なシステムとして機能するためには、今後とも図書館とメーカーとの連携が不可欠であると考えている。
4.最後に
導入前はシステムのトラブル、ヒューマンエラー、図書館システムとの連係エラー等々、不安材料が多々あったが、結果として、蔵書管理、資料保存機能のみでなく、予想以上の運用の効率化も図れ、導入による図書館運営への効果が現れていると感じる。
館内の様子
(2010年)
九州大学伊都図書館
所在地:福岡市西区元岡744
TEL:092-802-2457(代)
URL:http://www.lib.kyushu-u.ac.jp/