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話し手:近藤 茂さん(成蹊大学情報図書館 事務長)
ー本日は、成蹊大学情報図書館様に導入されました自動書庫について、 近藤事務長にお話をお伺いしたいと思います。
はじめに2012年、成蹊大学は創立100周年を迎えます。その記念事業の一環として情報図書館は設立されました。国際化とともに、情報化を推進するために、多彩な情報機能を備え、全学をネットワーク化し、学術文献.図書資料などの情報が瞬時に利用・発信できるようにしました。蔵書計画数は開架55万冊、閉架72万冊、その他3万冊の計130万冊を所蔵する図書館として、非常に大規模な図書館計画になりました。
さて、閉架書庫には収納能力72万冊の自動書庫を採用しました。市場には自動書庫を採用した図書館が増えてきており、当館でも検討していくことになりました。
アトリウム・プラネット
自動書庫
【自動書庫の導入背景・効果】
- ランニングコスト、特に人件費の削減が大きなテーマでした。32名いた職員が現在9名になり、残りは契約職員、派遣スタッフや学生アルバイトで運営しています。
- 以前の閉架書庫の出納サービスは、閉館30分前で受付終了していました。現在は、閉館ぎりぎりまで出納サービスができるようになり、サービス時間の延長が実現しました。
- 極力、人による管理業務を排除しました。これまでの閉架書庫は、人を入れなければなりません。閉館前には出納サービスを停止し、書庫に人がいないことを目視で安全確認をしていました。この作業は管理ミスがないように神経を使っていましたが、書庫が無人化されたことで不安がありません。
- 建築コスト、つまり建築床を作るコストをセービングできました。特に地下に設けた際は、顕著にコストに反映されました。
- 書庫は地下に配置し、無人化にしているので、万一の人の避難誘導上、管理が容易になりました。
- これまで1冊でも出納要求があれば、閉架書庫へ取りに行っていました。約10人の要求があれば、都度対応していました。利用者1人に対して10分~30分程度時間を要し、利用者を待たせていました。職員も書庫の業務に追われ、業務が固定化されてしまいます。自動書庫は数分で要求図書を自動搬送してくれ、出納スピードは格段に速くなりました。利用者にとっても、管理者にとっても時間を有効に活用できます。
- 自動書庫に格納される図書資料は、分類別に並べる必要がありません。つまりフリーロケーション管理です。必要に応じて、固定ロケーションも一部運用しています。
以上、コストパフォーマンスに優れた自動書庫は、少子高齢化を迎えた労働市場(スタッフの確保)や利用者のIT常用など、図書館運営を見据えると、閉架書庫のシステム化は非常に有効だと判断できました。
ー今後の世の中の動向を見据えると人件費の高騰が、あらゆる運営費を圧迫するお話は、非常に興味深い内容です。
それでは自動書庫を導入するに当り、機能面での要求や考え方はいかがでしょうか。
高額な自動書庫を導入するに当り、使い勝手と信頼性を検証していくことになります。
【自動書庫の導入機能】
- 成蹊大学の自動書庫は、単一コンテナの運用を採用しました。あくまでも出納作業、管理の単純化です。市場には複数コンテナの収納計画もありますが、収納効率を高めた特長は理解できますが、作業・管理が煩雑になり大変です。特に、図書サイズを制約条件とした際のリスクも十分に検討しなければなりません。
- 市場には取り外し可能なサイズ別収納の専用ユニットもありましたので、それを採用すれば収納効率は十分対応できると判断しました。
- その専用ユニットを取り付けた場合、金剛のシステムはコンテナ空き容量の管理手法について非常に理にかなっていました。図書資料の入庫処理(IDを読み込む)と同時に、図書資料の厚みも計測してくれます。コンテナの充填率が正確に管理されることになります。
- 入庫の際は、やはり人が介在した作業になり、人為的なミスは否めません。その作業のミスによる不明本の発生は、未然に防がなければなりません。これに対応する読み忘れ防止機能の標準装備は必須です。
- 出納ステーションでの実作業は、設置後の初期入庫作業に多くの時間と労力を要しています。コンテナには両面バランスよく格納していきたいために、出納ステーション上でのコンテナ回転機能は非常に使い勝手がよく、入庫作業がスムースに図れます。
基本機能を満たしていても、自動書庫はマルチではありません。つまり、図書資料のなんでも入りますとは考えていません。運営面での検討の結果、先生からのブラウジングが多い図書資料はできるだけ開架に配架したり、開架・閉架の利用区分を使い分けるようにしたりしました。一方で自動書庫だけではなく、書架の奥行寸法の設定や雑誌架の表紙の見せ方などの開架書架に係わる検討も十分に議論しました。また、文化財に相当する図書資料の保管管理も含めた貴重書庫の検討も重要です。
今回の情報図書館の建築に当り、開架・閉架・貴重書庫のトータルプランニングできた金剛をパートナーとして選定しました。トータルに検討できたことで、自動書庫の欠点であったブラウジンクについても、開架へ55万冊の配架することでリカバーでき、本に囲まれている図書館を実現しました。利用者(学生、先生)には本の見やすさ、管理者としては作業・管理のしやすさに、金剛の経験とノウハウで期待に応えてくれたと思っています。
出納ステーション
貴重書庫
雑誌コーナー
個室学習室
開架コーナー
建築はユニークなデザインであり、コストを費やした分、多くの見学者でPR効果が非常に高く、目に見える広告塔・シンボルとして費用対効果が大きいです。少子化高齢化、多様化に対応した図書館とするために、アウトソーシングできないサービスはロボットが人の代わりする時代。ネット検索の利便性に使い慣れた時代の人々は、システム化や機械化に適応していきます。設備等のハードを進展するなかで、レファレンスなどの対面サービス、ソフト面については今後も充実・強化を努めていきます。
外観
ー本日は、貴重なお時間とお話いただきまして、ありがとうございました。
(2007年)
成蹊大学情報図書館
所在地:東京都武蔵野市吉祥寺北町3-3-1
TEL:0422-37-3857
URL:http://www.seikei.ac.jp/university/library/