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寄稿:森田 レイ子さん(特定非営利活動法人 文化財保存活用支援センター 代表) ※所属・部署は取材当時のものです
文化財本活用支援センターはNPO法人として文化遺産を後世に伝え文化の継承の一助となることを目的に、平成17年5月に太宰府市でスタートしました。活動内容は文化財の調査、研究、保存、およびその活用に関して、専門的な技術支援を行うことです。
発足以来、九州国立博物館(以下「九博」)で取り組まれていIPM *1活動の一環として、露出展示資料の日常管理、収蔵庫の清掃、寄贈品の収蔵準備に取り組んできました。これらのIPM活動の実践には、博物館の指導に負うところが大きいと思います。
ここでは、現在九博で毎日実施している露出展示資料の日常管理業務について、紹介したいと思います。
露出展示資料の日常管理業務は、開館2ヶ月目から資料の状態点検と常態維持及び除塵防徽を目的に、閉館後の時間を利用して取り組むこととなりました。九博のIPM計画に基づいて、露出展示資料の生物被害を未然に防止するため、日常的に点検活動と保守管理を実施しています。
IPMを推進していくためには、対象資料の観察と併行して除塵防徹を基本とした日常管理が欠かせません。以下はその実施内容を簡単にまとめたものです。
- 担当学芸員と協議の上、対象資料の保存状態、材質、製作技法を把握し、日常管理のための用具は対象資料の材質に適したものを選択する。
- 毎日閉館後、LEDライト等を使用して、目視によって保存状態を観察し、作業を行う。
- 日常管理の原則は、資料に直接触れずに、羽根ハタキ等で柔らかい風を起こすことで、埃を動かし、落下した塵埃をクロスで拭き取る。
- 掃除機を使用する場合はULPA*2、HEPA*3フィルター使用のものを用いる。
- 日常管理作業をマニュアル化し、作業の基本事項を徹底する。
- 担当者は作業や点検内容を日誌に記録し、月例報告書を提出する。
- 展示資料のカルテを作成し、保存状態を記録する。
- 個別の展示資料の保守管理については、博物館担当者と協議の上、休館日を利用して担当者立会のうえで、作業を行う。
上記のように、連日作業にあたるため平日は、担当者のシフト体制で作業を行い、休館日はスタッフ全員で総合的に点検と保守管理を実施、IPMについてスタッフの共通理解を深めるよう努めています。このようにして、毎日の活動のなかで、展示資料の状態を観察と日常管理作業を通して把握し、問題等が生じた場合は、直ちに九博の担当者と連絡をとり対応できる体制をつくつています。
*1 IPM=Integrated Pest Management (総合的有害生物管理)
*2 ULPA=Ulyra Low Penetration Air Filter (工アフィルターの一種)
*3 HEPA= High Efficiency Air Filter (工アフィルターの一種)
文化交流展示室 崇福寺(再現文化財)展示
文化交流展示室 遣唐使船積荷 展示
遣唐使船:錦織の埃の調査
唐櫃内の点検・整理
唐櫃内の清掃
崇福寺(再現文化財)の埃除去作業
4Fエントランス太宰府政庁南門・人形の除埃作業
九州国立博物館 外観
(2007年)
特定非営利活動法人 文化財保存活用支援センター
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