矢印アイコン

PAGE TOP

  • LIBRARY

市民参加の手作り図書館

一関立一関図書館

外観写真

話し手:小野寺 篤さん 一関市立一関図書館 館長、飯村 昌弘さん 一関市立一関図書館企画管理係 係長 ※所属・役職は取材当時のものです。

 
 
―昨年(平成26年)7月に新館をオープンされました。最初に新館の基本理念についてお聞かせいただけますか?
 
  新図書館の基本理念は「でかけよう ことばの海へ 知の森へ」です。これは一関ゆかりの国文学者 大槻文彦が編纂した、わが国初の近代的国語辞典『言海』に由来するものです。図書館を一関市民の学びを支える施設に、という思いが込められています。図書館前にある大槻文彦の胸像はもともと市役所にあったものでしたが、図書館の新築にあわせてこちらに移設し、傍らには理念を刻んだ石碑を設置しました。開館後はこの理念に沿って「辞書を編む」と題した記念事業を開催しました。小学校3~6年生を対象とした辞書作りの体験会で、講師は『大辞林』を出版されている三省堂の辞書出版部の方に務めていただきました。子供たちの身の回りにある言葉を自分自身の言葉で説明して辞書にまとめるという、かなり難易度の高い試みでしたが、子供たちはやりがいを感じてくれたようです。大槻文彦が残してくれたDNAを将来の一関につなげていく試みとして今後も継続していきたいと思っております。
 
 

図書館前に設置された大槻文彦像(上)と図書館の理念を刻んだ石碑(下)
 
 
 ―図書館建設にあたって工夫された点など教えてください。 
 
 市民の皆さんと一緒になって、一関にとってどのような図書館が必要かということを全く白紙の段階から考えました。活動の中心となったのは“新一関図書館整備計画委員会”です。委員会の委員長には世嬉の一酒造の佐藤社 長に引き受けていただきました。世嬉の一酒造は江戸時代から続く一関の蔵元で、佐藤社長は「酒の民俗文化博物館」や「いちのせき文学の蔵」を運営するなど、地域の文化伝承に対して非常に深い理解をお持ちの方です。新図書館の計画にあたって図書館としての機能はもちろんのこと、文化的な側面からもどのような図書館が必要かを一緒になって考えていただきました。立地についても当初は市役所の近くの敷地も候補地として挙がっていましたが、議論を重ねる中で今の場所になりました。市役所近くの候補地は広さの面では申し分なかったのですが、駅から遠いという難点がありました。新しい図書館は市民の学びを支える施設ですので、車を持たない高齢者の方や高校生も利用しやすいようにと、最終的に駅から徒歩5分という今の場所を選択しました。 敷地が狭い分、一階部分は駐車場、図書館は二〜三階という構造になりました。もちろんエレベーターも完備していますし、一階からアクセスしやすいように階段も広く確保しました。使いやすさの面で平屋建て構造に対しての根強い意見もあったのですが、議論を重ねるうちに歩み寄りができて、みんなが納得する形になったと思います。何より整備計画委員会の活動を通じて市民と図書館の信頼関係を築くことができたのは大きかったですね。委員会の皆さんには開館後も応援団となっていただくなど、図書館の活動を支援していただいています。
 
 

2階の図書館フロアに繋がる大階段
 
 
 ―市民の方々の理解も深く、うまく連携をとっていらっしゃいますね。 
 
 一関在住の作家 及川和男さんには図書館の名誉館長を引き受けていただきました。市内各地での講演活動のほか「エッセイの書き方講座」や、お薦め本を紹介しあう「私の一冊」といった講座を開催していただいています。及川名誉館長もまた一関の歴史や文化に理解が深い方で、単に図書館を紹介するにとどまらない活動をしていただいています。たとえば、地元の専修学校に入学してきた新入生には図書館のほか、世嬉の一酒造の「いちのせき文学の蔵」をあわせて紹介していただいたりもしました。公設、私設の別を問わず、一関の文化を多面的に捉えられるように、積極的に活動していただいています。
 
 ―FaceBookでもイベントの様子を積極的に配信していらっしゃいますね。
 
 イベントは図書館主催のもののほか、市民の方が主催されるものも多数あります。読書推進や文化創造といった図書館としての基本的な意義に沿うものという条件はありますが、イベントをきっかけ に図書館を利用するようになっていただければと思っていますので、なるべく受け 入れるようにしています。その他、学校や幼稚園、保育園からの見学にも積極的に応じています。お子さん達自身の図書館利用を通じて親御さんたちにも図書館を身近なものに感じていただけるようになればありがたいですね。
 子供さんたち向けの読み聞かせ会は定期的に開催しています。毎週土曜日には「図書館サポーター」という市民ボランティアの方々にも読み聞かせを担当していただいています。『図書館サポーター養成講座』も開催していて、受講していただいた方の中にはサポーターとして購入図書へのラベル装備作業などをお手伝いしている方もいます。仕事を引退された高齢者の方を中心に、ご自分の都合のつく時間帯に図書館に来ていただくゆるやかなボランティアです。
 さらに平成27年度からはブックスタートにも取り組んでいきます。一関でも少子化が進んでいますので、健康づくり課の支援を受けて実施できることになりました。
 
 

広さもコレクションも充実の児童コーナー
 
 
 ―世代を超えた市民交流の場として図書館がますます機能していきますね。
 
 建設段階から高齢者や子供さんでも安心して利用できるようにする狙いはありました。書架の高さは低く抑えて、通路幅も広く確保しています。児童コーナーもゆったりと広く、一階にはカフェも併設していますので、親子連れの方でも気軽に立ち寄っていただくことができます。 
 
 

開放的な雰囲気のカフェコーナー
 
 
―市民の皆さんも図書館に対する見方が変わったのではないでしょうか 。
 
 旧館の時には一日の利用者数は300人ぐらいでしたが、新館が開館してからは平均1,000人ほどで推移しています。リピーターの方の割合も増えていますが、利用者カードの新規登録数が増えているのは嬉しいですね。一関には本館を含めて計8つの図書館があるのですが、8館全体で見ても利用者数は伸びています。新館ができたことで図書資料も充実してきていますし、市民の意識の中でも図書館を見直すきっかけになったようです。
 
 ―今後がとても楽しみです。本日は貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。
 
 
(取材日:2015年2月10日)
取材・執筆:矢賀部 仁 金剛株式会社 社長室
※取材当時 

PHOTO GALLERY

グループスペースは、小学生の調べ学習などに、クラス単位で利用されている

高さは低く抑え、通路を広く確保した開架書架

小野寺館長

飯村係長

一関市立一関図書館
所在地:岩手県一関市大手町2-46
T E L :0191-21-2147
開館時間:平日:午前10時から午後8時
     土・日・休日:午前10時から午後7時
休館日:・月曜日(休日の場合は翌日以降の休日でない日)
    ・毎月第4木曜日(図書整理)
    ・年末年始(12月29日から1月3日)
    ※詳しくはホームページにてご確認ください
U R L :http://www.library.city.ichinoseki.iwate.jp/

オリジナルキャラクターわんこきょうだい