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地域に密着し、「ここにしかない情報」を提供する

恩納村文化情報センター

外観写真

話し手:呉屋 美奈子さん 恩納村教育委員会 社会教育課 恩納村文化情報センター 主任 ※所属・役職は取材当時のものです。

2015年4月、沖縄県国頭郡恩納村に、村内初の図書館機能を持つ施設・恩納村文化情報センターがオープンしました。1Fが観光情報フロア、2Fは村民から長年要望が出ていた図書情報フロア(図書館機能)という複合施設になっている同センター。その取り組みと現状について、呉屋様に伺います。 

恩納村文化情報センター 外観
 
 

―オープンして5か月ほど経ちましたが、利用状況はいかがですか。 

 予想を大きく上回る盛況です。開館から4カ月間経った8月末の累計で、入館者数は33,902人、図書貸出冊数は29,043冊となりました。蔵書数が3万冊程度であることを考えると貸出数も非常に多いですね。村民の利用登録者は1,500人を越え、村外の登録者も1,000人の大台に乗りそうです。全体で村の人口の2割強となる 見込みです。オープンして間もない施設ですので、まずは多くの人に足をはこんでもらって親しみを持っていただくことを当面の目標としていましたが、早くも達成できそうな状況になっています。

 このように順調に利用していただけているのは、読書に対する需要がもともと村民にあったことにくわえ、オープン以来のイベント開催などの取り組みが奏功しているのではないかと思います。

海の見える閲覧席

―どういった取り組みをされてきたのですか。具体的な例を教えてください。

 まずはイベント類ですね。オープンして間もない5月に、話題の作家・又吉直樹さんを招いて講演会を行ったことは非常に大きなインパクトとなったようです。作品「火花」を発表する前にアポイントが取れていたのが幸いでした。その後は地元の資源を活用しながら、近隣の施設とも適宜連動したイベントを開催しています。7月には村内にある沖縄科学技術大学院大学の先生に講師として来ていただき、当館の屋上を開放して天体観測を行いました。

 また、 村で毎年行われる「うんなまつり」という祭りの期間には 「日本の文化を再発見~浴衣で読書しませんか?~」というイベントを開催し、おりがみ教室やうちわづくり教室を行 いました。利用者の方に浴衣で来館してもらったり、職員も自前の浴衣を着用したりして盛り上げました。

 さらに8月に行った「サンセットウィーク」は、当センター周辺の一帯が夕日の名所でもあることに着目した企画です。当センターの閉館時間を「夕日が沈むまで」とし、利用者の方に日の入りを見ながら過ごしてもらうというもの。この期間は隣接する博物館も閉館時間を調整したり、企画展示を行ったりして連携しました。

 現在は、「グリーンフラッシュの見える恩納村」という企画を開催しています。グリーンフラッシュは、夕日が沈むときに緑色に見える自然現象です。ハワイやグアムではこのグリーンフラッシュが見られることを大々的にPRしているところもあり、実際にこれを目当てに現地へ行く観光客もいるそうですが、実は恩納村でも目にできる現象なのです。そこでこれをあらためてPRしようと、グリーンフラッシュの目撃情報を募集し、マップを掲示する取り組みを始めまし た。

 このように、いま地元にある資源を最大限活用して発信できるよう、色々と工夫を凝らしながらイベントを企画しています。

 また、村の観光支援 を目的とした取り組みもしています。恩納村にはリゾートホテルが多くあるのですが、そのうちANAインターコンチネンタル万座ビーチリゾートとカフーリゾート フチャク コンド・ホテルの2か所に当センターの所蔵本を置き、ホテルの宿泊客の方々へ貸出しています。ホテル内でどのように利用されているかという詳細についてはまだ調査中ですが、好評をいただいているようです。

「日本の文化を再発見〜浴衣で読書しませんか?〜」開催時

「日本の文化を再発見〜浴衣で読書しませんか?〜」開催時

「グリーンフラッシュの見える恩納村」
 

「サンセットウィーク」の様子

「サンセットウィーク」の様子

8月には「夏休みスペシャルおはなし会」として、博物館のシアタールームで怖い話を読むイベントも開催
 
 

  ―観光の支援にも力を入れていらっしゃるのですね。

 はい。もともと当センター設立の目的として、村の産業の支援、とりわけ主力産業である観光の支援も掲げ られていたのです。1日でも村での滞在日数を増やしてもらうことを目指して、様々な取り組みを考えています。

 たとえば当センターの1Fは観光情報フロアとなっており、村の商工観光課の職員が「旅の案内人」として常駐しています。村内の観光スポットのうち気になるものを選んで自分だけの地図を作ることができる「フィールドナビ」や、利用者が自由に恩納村で撮った写真を投稿できる「キオクバンク」というページを当センターのホームページ上に設けています。投稿写真は1Fにある「キオクボード」からも閲覧できます。観光客の方にここで情報を集めていただき、それをもとに村内をさらに観光していただくことで、村での滞在時間を増やしてもらえるよう工夫しています。

フィールドナビ
302ポイントの観光スポット情報が入っている。
情報は観光課職員により随時更新中。

キオクボード
 
 

―観光情報フロア・図書情報フロアともに、地域の情報を集め、最大限活かしていらっしゃることが印象的です。運営をされる中で、気づいたことはありますか。

 地域に密着した情報の収集と提供を行ううち、インターネット上にはない細かい情報まで蓄積できるようになりました。例えば旧盆に村の各地で開催されるエイサーのスケジュール。地区ごとに異なる開催日時は基本的にその地域の人にしか知らされておらず、インターネットや本でも公開されていない情報です。しかし当センターの観光情報フロアには地域の細かな情報まで収集できる商工観光課のスタッフがいるため、複数地区のスケジュールを一覧にまとめて掲示することができました。これは、このセンターに来ないと見られない情報となっています。

 他にも、地域の方と一緒に歩いてその地の歴史や伝承を聞きながらマップを作成するワークショップなども行っています。その時のマップも「キオクボード」として観光情報フロアで閲覧可能です。これもまた、ここでしか見られない情報と言えます。

 ―地域に徹底的に密着されているからこそ、インターネットや市販の本には載っていないような、深い情報が手に入るというのは興味深いですね。今後の展望について聞かせてください。

 まず、郷土資料の更なる収集と充実をはかりたいですね。これもまたここにしかない情報であり、観光客のためにも地元の方のためにもなる資料だと思っています。通常はフロアの隅にあることが多い郷土コーナーですが、当館ではあえて図書館フロアの中心の、しかも博物館への出入り口のそばに配置しています。そして開館から5か月経った現在、色々な取り組みの甲斐あって、当面の目標であった「まずは多くの人に来てもらうこと」「施設に親しみを持ってもらうこと」は達成しつつあります。今後は次のステップとして、読書支援やレファレンス機能など、情報提供機能の役割をいっそう強化していきたいですね。その中で、博物館と隣接しているという強みもさらに活かしていきたいです。

2F郷土資料コーナー

 それから当センターのすべての活動において地域の魅力を積極的に発信していき、観光客だけでなく地元の方にも、地域の資源を再発見していただきたいと考えています。グリーンフラッシュのように、ここに住んでいると何気なく目にできるものが、実は観光客が遠くから見に来るほど価値ある資源だった…ということもあります。当センターのイベント等をきっかけに、地域の方がそのことに気付いていただけると良いですね。図書情報フロアの窓際の席や3Fの展望台に座るだけでも、いつも見ている海の素晴らしさに改めて気づくことができるのではないかと思います。

 ―地域の資源を活かしたイベントや情報提供に徹底しておられる姿勢と企画力のすばらしさに驚かされました。本日はありがとうございました。

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 地域の力を活かした“読書環境づくり”

 
 
(取材日:2015年8月27日)
取材・執筆:原田 亜美 金剛株式会社 社長室
※取材当時 

PHOTO GALLERY

恩納村文化情報センター 館内

キオクバンクに投稿された写真は定期的に館内に展示する

おはなしのへやは恩納村の海をイメージした内装になっている

講演後の7月に又吉氏は「火花」で芥川賞を受賞し、さらに注目を浴びることとなった

恩納村文化情報センター
所在地:恩納村字仲泊1656番地8
T E L :098-982-5432
U R L:http://www.onna-culture.jp/