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話し手:川原 篤さん(綾川町教育委員会 生涯学習課主査) ※所属・役職は取材当時のものです。
外観
ー綾川町立生涯学習センターの概要と建設経緯についてお話を伺います。
綾川町役場の隣に、図書室と展示室と研修室を組み合わせた生涯学習センターが開館しました。開架・閉架を合わせて8万冊程度の図書館です。
綾川町は平成18年に2町が合併し誕生しました。これまでの図書館は老朽化、狭隘化著しいうえに司書資格者もいないという、近代化の図書館サービスにはほど遠い体制でした。
地域住民の皆さまからの図書館新設に対する要望の高まりをきっかけに、また綾川町は昭和48年より「教育の町」宣言を掲げていましたので、教育委員会と財政担当課にて図書館建設への協議がキックオフされました。平成21年設計に着手しましたが、教育委員会をはじめ役場内でも図書館運営に詳しい職員が誰一人いない状態で手探りの中、設計事務所との打ち合わせや近隣図書館に何度も通い、綾川町図書館のあるべき姿を具現化していきました。
ー図書館づくりに考えたこと(配慮したこと、新しく採用したこと)はなにかありますか。
まず、図書館は多くの方が訪れる場であり、一般に本が好きな人は自然に来てもらえます。私自身、実は図書館担当になる以前は図書館を利用したことがありませんでした。そこで図書館づくりのポイントとして、今まで利用したことがない人をいかにして図書館に来ていただき、図書館利用を日常化していただくかを大切にしたいと考えたことです。具体的には、施設と運営でポイントを絞りました。
施設面では、気軽に入れる雰囲気や空間作りです。設計者との打合せを重ねたことで、天井を高くとり圧迫感をなくし、曲線を入れることでの空間への遊び心の演出、ワンフロアを設計には配慮していただきました。
運営面では、指定管理者制度の導入です。残念ながらこれまで綾川町には図書館運営のノウハウがほとんどありませんでした。近隣の図書館職員の方々へのヒアリンクや教育委員会内での議論等を重ねながら、綾川町の要求仕様書を作成しました。図書館づくりでは、この仕様書作りが一番の苦労した点になりました。
ー指定管理者についてもう少しお話をお聞きします。
綾川町では行政改革の意識の中、民間にできることは民間委託を検討するとの方針が打ち出されました。先ほどもお話ししたように教育委員会にはこれまでノウハウがほとんどなかったことに加えて、綾川町がこれから司書の専門職を雇用し、図書館サービスを一から作り上げる時間もありませんでした。今日、全国各地で行政サービスの向上を図るために、ノウハウを持っている指定管理者への委託が進展しています。綾川町もそのような全国の動向を視野に入れ、指定管理者制度を導入し、指定管理者と町とが連携して図書館サービスを展開していく方針を固めました。
指定管理者は開館以来、多様なアイディアを駆使し、図書館サービスを提供していただいています。 特に町内の情報を発掘し、テーマに関連した情報発信を積極的に行っています。長い目でこの効果については、子どもたちに対して記憶され、綾川町のアイデンティティ形成に期待しています。
児童書コーナー
おはなしコーナー
ー今回のテーマでは、「感動できる利用者サービスの工夫」を挙げています。
利用者サービスを含めた運営は指定管理者に委託していますが、私たち教育委員会の立場として、インフラ整備の重要性を改めて感じています。サービスを提供できる揚づくり、例えば図書館の中に専用の学習室を設けることで、子供たちだけではなく、町内外の方々に綾川町に触れるきっかけになれば嬉しく思います。ここは町の学びのステーショ ンです。町民の皆さんの学びを応援していきたいと思います。
「綾川町アイデンティティ」展示コーナー
一般書コーナー
ー最後に、今後の活動について展望を伺います。
綾川町は指定管理者制度を導入しましたが、町としても積極的に携わり、指定管理者と共々に図書館運営をしていきたいと思います。教育委員会も利用者の声を聞き、指定管理者と対話を重ね、信頼関係の礎を築いていければと思います。綾川町の情報収集と発信に期待して下さい。
ー本日は貴重なお時間を頂きまして、ありがとうございました。
取材・執筆:木本 拓郎 金剛株式会社 業務本部
※取材当時
綾川町立生涯学習センター
所在地:香川県綾歌郡綾川町滝宮318
開館時間:9:00~18:00
休館日:毎週月曜日、図書館整理日(毎月第4木曜日)、特別資料整理日(3日以内)、年末年始(12月28日~1月5日)
URL:http://www.town.ayagawa.kagawa.jp/docs/2012030900029/
設計監理:株式会社 教育施設研究所