矢印アイコン

PAGE TOP

  • MUSEUM

体験型展示など楽しみながら学ぶ仕掛けで地元ゆかりの文学を紹介

高志の国文学館

話し手:川渕 貴さん(高志の国文学館 主任)


ー富山県立の高志の国文学館がオープンしました。高志の国文学館に関する概要と経緯についてお伺いします。 
  
 高志の国文館(以下、文学館)は、富山市の中心部に、富山県ゆかりの作家や作自の魅力を紹介し、誰もが気軽に「ふるさと文学」に親しみ、学ぶことができる場として平成24年7月に開館しました。オープニングから3カ月あまりで5万人を超える方々にご来館いただくなど、連日賑わっています。文学館の整備段暗から携わった者としては、この1年の間で、文学館周辺を含めて、とても素晴らしい環境になったことを大変嬉しく思っています。 
 文学館整備の経緯については、平成20年度にふるさと文学の振興策について検討する有識者による委員会が設置されたことが始まりでした。この委員会からは、「富山県の厳しくもあり雄大なる風土の良さを伝えていく事は大変重要であり、ふるさと文学の振興を進めるべき」という報告を受けました。また、同時期に実施した県民アンケートでは、「ふるさと文学の振興に取り組むべき」との回答が約90%、「文学の振興拠点を整備すべきと」の回答が約75%と、ふるさと文学の振興に肯定的な回答が予想以上に高いことがわかりました。 
 これらをふまえて、平成21年度からは文学館の整備について具体的な検討が進められ、昭和50年代に建てられ老朽化が進んでいた知事公館を廃止・改修し、隣獲する県有地も活用して文学館を整備することになりました。その後、平成22年に設計、平成23年には工事に着工し、このたびの開館に至っています。 
  

外観

外観
 

ふるさと文学の回廊
 

ふるさと文学の回廊

ふるさと文学の蔵

 
ー高志の国文学館の特長についてお伺いします。 
  
 富山県は万葉集を編さんした中心人物といわれている大伴家持が越中国守として5年間赴任した際に223首もの歌を万葉集に残した万葉のゆかりの地です。 
 現代においても多くの作家や漫画家、映画監督を輩出しており、富山県を舞台にした文学作品も多数あります。※堀田善衛や源氏鶏太、角川源義といった作家を輩出しているほか、宮本輝の「螢川」、柏原兵三の「長い道」、新田次郎の「劒岳 点の記」など、富山を舞台にした文学作品も多数あります。さらに富山県は、映画では滝田洋二郎や本木克英、アニメでは細田守を、漫画では藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄らを生んでいます。 
  こうした富山県ゆかりのふるさと文学を紹介し、ふるさとを知り、学ぶ機会を創出する情報発信拠点であることが文学館の特長です。 
  このほか、文学館内には文化活動を行うサークルの活動拠点となる研修室や庭を見ながら食事ができるレストランを併設しています。このレストランには全国的にも有名なイタリアンの落合務シェフの直営店が出店しており、こちら連日多くの利用者で賑わっています。 
  
ー文学館整備の段階で、配慮されていること、新しく採用したことはどのようなことでしょうか? 
  
 まず、桜の名所としても有名で風情のある松川べりから文学館へのアプローチをメインとして、今回のの整備に併せて文学館南側の隣接地や松川|の遊歩道も一体的に整備しました。また、周囲の閑静な住宅街に配慮し建物の高さを抑えるなど、周辺環境との調和にも配慮しています。 
 また、旧知事公館の広くて緑豊かな庭を活かした配置となっており、館内のライブラリーやレストランから見る庭の眺めはとても開放的です。 
 次に、館内のレイアウトについてですが、有料ゾーンばかりでは敷居が高くなってしまうので、有料ゾーンの展示室のほかに、読みたい本を自由に手に取って庭に面したソファでゆっくりとくつろいで時間を過ごせるライブラリーや絵本などを読んでいただく親子スペースなど、無料ゾーンを広く設けました。来館者のアンケートで寄せられた意見でもこうした無料ゾーンが設けられていることで気軽に入りやすくありがたいとの評価もいただいています。展示の面では、この文孝館ではいわゆる文学のみならず映画やアニメなどいろいろなジャンルの企画展を開催していく予定であり、それぞれのジャンルや規模に応じて自由にレイアウトできるよう、可動式展示パネルや展示ケースを採用しています。 
 常設展示室についても可動壁、可動パネルを活用し、展示内容に少しずつ変化を加えていくことにより、「常に何か新鮮な発見ができる施設」として、飽きがこない展示を心がけ工夫していきたいと考えています。 

親子スペース

親子スペース

エントランス・ライブラリーコーナー

エントランス・ライブラリーコーナー

ライブラリーコーナー

ライブラリーコーナー


  
ー今回のテーマでは「感動できる利用者サービスの工夫」を挙げています。貴館での取り組みを教えて下さい。 
  
 まだ開館して聞もないので、「感動できるサービスの工夫」とまで言える取り組みかどうかわかりませんが、富山県ゆかりの文学の魅力を紹介するにあたって、ケースの中に本や原稿を並べるだけでなく、映像や音を組み合わせた体験型展示もあれば、手で動かしてみる、手に取ってみる、などいろいろな仕掛けを取り入れて楽しみながら学んでいただくように工夫しています。 
 今後も来館者の方がどのような展示やサービスを求めているのかを常に把握して、改善していきたいと思います。 

体験型展示

体験型展示「不思議な本」 

体験型展示

体験型展示「万葉とばし」
  
  
ー最後に、今後の活動について展望をお伺いします。 
  
 様々な企画展やイベントを開催し、年齢を問わず誰もが文学館に行ってみようか」と思っていただけるような、気軽に楽しめる賑わいのある施設にしていきたいと思います。   
  
ー本日は貴重怠お時聞をいただきまして、ありがとうございました。

 
取材・文:木本 拓郎(金剛株式会社 企画チーム)

高志の国文学館
所在地:富山市舟橋南町2-22
開館時間:展示室8:30~17:00、研修室他9:30~21:00
休館日:火曜日(休日を除く)、祝日の翌日、年末年始、臨時休館日 
常設展示観覧料:一般200円(団体160円)、大学生160円(団体100円)
        ※団体料金は20人以上の場合
企画展示観覧料:展覧会によって設定
URL:http://www.koshibun.jp/
設計監理:株式会社シーラカンスアンドアソシエイツ