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話し手:渡辺 順子さん(東北大学大学院法学研究科法政実務図書室)
ー本日は東北大学様にお伺いしました。法政実務図書室のご紹介をお願いします。
法政実務図書室は学部や付属研究所にある部局図書室として位置づけられています。新司法試験のための法科大学院と公務員等をめざす公共政策大学院専用の図書室であり、2004年に新設されました。両大学院への授業支援が主な業務になります。具体的には、授業で使用する教科書や参考書の整備と運用、学生からの問い合わせへの対応などを行っています。
開架閲覧スペース
ー専門図書室として、工夫はありますでしょうか。
法律の改正に伴い改版が頻繁なので常に新刊情報をチェックしています。また、授業担当の先生方からは随時、指示が受けられるように連絡を密にしています。加えて、学生からの希望図書にも配慮しています。1学年110名ほどの学生がおり、授業期間中は、利用者への迅速な対応を心がけています。
ーさて、3月11日の東日本大震災時の状況について伺います。
当日午後2時46分、開館中に地震が発生しました。建物が免震構造のため、ゆらゆらと大きく、長く揺れました。室内に学生と職員合わせて10名がいました。まずは安全に避難させることが一番に頭に浮かびました。ドアを開け避難通路を確保し、揺れが収まった時に速やかに外に全員避難しました。後に震度7だったと分かり、体感した揺れが震度5くらいだったので改めて驚きました。
本学の図書館・図書室のほとんどは、大量の図書資料が落下し、大きな余震もあって、完全復旧までにはさまざまな困難がありました。法政実務図書室では被害が軽微であり、新司法試験直前のため、学習環境を提供する必要があり、震災から4日後の3月15日から利用を再開しました。
被害が少なかった理由として、固定書架においては、落下防止装置(震度5程度の揺れで、書架上部3段が奥へ傾斜するために図書が落下しにくくなる)が作動したため、図書の落下はほとんどありませんでした。集密書架においては免震装置が作動し、図書の落下はありませんでした。また、ゴム付きのブックエンドの使用など、地震に備えた設備が極めて有効に働きました。
地震対策 天ツナギ
地震対策 傾斜スライド棚
地震対策 ゴム付きブックエンド
ー地震への備えが安全を確保されたようです。
私は宮城県沖地震を経験したため、普段から地震への意識を高く持っておりました。特に職場である図書室は、大学院教育にとって非常に重要な場です。地震によって重い図書資料が落下すれば、利用者は大きな危険に直面します。書架が破損すれば、修理や再配架などで復旧に時間がかかり、学習環境が損なわれます。学生は将来の夢に向かって勉強しているので、当然のことだと思います。
ー学内の図書館(室)の地震の情報共有はいかがでしょうか。
附属図書館(本館)がコントロールタワーになり、被害状況を一元的に集約しました。学内各図書館(室)の開館情報は、インターネット上で行い、被害状況や復旧状況の写真等も共有されました。
ー最後に、地震についての教訓を伺います。
まず1つ目には、利用者の安全、状況確認です。現在、何人利用しているのか、どこにいるのかを把握する必要があります。本図書室は規模が小さいので、目視確認できますが、規模が大きくなると、大きな課題となるでしょう。入退室者の確認を正確に行うことにより、在室者数を迅速に把握でき、避難誘導・安否確認を行うことができます。2つ目には、避難通路の確認です。非常灯や出入り口、窓の開閉構造等を事前に把握する必要があります。3つ目には、図書資料の落下防止です。書棚からはみ出す大型本もあり地震後、滑り止めシートを貼ってみました。最後に、時間外開室担当のアルバイトを含む職員全員が地震時に適確に対応する必要があります。地震対応マニュアルの整備だけではなく、普段の業務の中で、非常時の対応について繰り返し指導することが重要だと思います。
ー本日は、貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございました。
取材・文:木本 拓郎 金剛株式会社 企画チーム
東北大学大学院法学研究科法政実務図書室
所在地:仙台市青葉区片平2-1-1
TEL:022-217-4858
URL:http://www.law.tohoku.ac.jp/library/katahira/