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話し手:高橋 信一郎さん(花巻市総合文化財センター 上席主任学芸員) ※所属・役職は取材当時のものです。
ー花巻市総合文化財センターの位置づけや特長について、お話を伺います。
平成18年に1市3町が合併した花巻市において埋蔵文化財保護のための中心施設として、平成23年に開館しました。まず花巻市総合文化財センター(以下、文化財センター)の建設計画の経緯についてお話しますと、市町村合弁に伴い所蔵する埋蔵文化財の登録方法や保管状況がパラパラであったこと、資料の整理作業を分散して行って非効率であったことから埋蔵文化財資料を集約して保管・収蔵し整理・調査研究を行う施設として、文化財センターの建設がスタートしていきました。
文化財センターの特長としては、IFに展示室を設け、市内にある早池峰山の動植物やユネスコ世界無形文化遺産でもある早池峰神楽を意識した展示をしているほか、埋蔵文化財を活用した体験学習室が設置されています。2Fには収蔵庫を設けました。収蔵庫の一部に見学窓を設け、見せる展示を行っていますなお収蔵庫には、現在、市が所有する資料類約5000点(岩手県に預けている文化財資料も含め)を収蔵しています。
展示室ー早池峰の自然
展示室ー早池峰信仰と神楽の世界
早池峰山岳博物館
早池峰山岳博物館
ー現在の日常業務について、お話を伺います。
大きく2つほど紹介します。1つ目は、冒頭お話しました合併後の埋蔵文化財の整理・台帳登録についてです。5000点余りの資料についてデータベース化を進捗中であり、できるだけ早期に構築したいと考えています。2つ目は、発掘調査になります。市内で行われる公共工事や住宅建設時に埋蔵文化財を保護するために確認を行い、必要に応じて記録保存のための発掘調査をし、調査報告書を作成するための作業を行っています。
ー3月11日東日本大震災について、お話を伺います。
当時私は外出していましたが、尋常ではない揺れでした。地面は波を打つように動いており、恐怖を覚えました。ちようど展示室工事が終わる時期に地震が発生しました。地震により物流が困難になったため、職員をはじめ、工事関係者も全く身動きが取れなくなったために、工事は完全ストップしました。
収蔵庫の棚は落下防止対策や棚の固定を施していましたので、まったく大丈夫でしたし展示ケースの被害もありませんでした。
しかし、展示室工事がストップしてしまったため、開館は当初4月2日から、5月22日に延期になりました。開館時期については、東北地方はまだ落ち着いておらず、混乱している状況のなかで、開館の是非について協議されましたが、市長より「どこかが動き出さないと始まらない。自粛ではなく、復興に向け積極的にPRする」といったリーダーシップが開館を後押ししました。
ー震災での教訓についてお話を伺います。
まず、収蔵資料の固定方法を再検討していきたいと思います。今回の地震では被害は最小限度にとどめることができましたが、周辺施設の被災状況も考慮すると、地震の揺れの方向では大きな被害が想定されます。次への備えが重要だと考えております。
次に、近隣自治体(陸前高田市や釜石市、大槌町)への文化財支援に携わりました。市博が津波被害を受けて、文化財をはじめ資料台帳も流された状態での文化財レスキューです。資料の管理体制や、文化財関係の緊急時のマニュアル作りも各方面の連携が重要だと感じました。
最後に、今回初めて緊急地震速報のメール受信を経験しました。停電やガソリン不足といった生活のインフラの確保、生きていく上で改めて重要だと考えさせられました。個人的な地震の備えも大事だと強く感じています。
ー最後になりますが、展望についてお話を伺います。
国・文化庁では、文化財の保存と活用に力が入っています。私どもも、子供たちに実際の体験学習を通じて伝えていく大切さを改めて感じ、多くの方々に身近に感じていただくような工夫や集客策を講じていきたいと思います。
博物館等の文化施設の生き残りの時代に突入したと言われていますが、地域の財産を保全し、地域のアイデンティティを発信していく、花巻市の歴史を知る入り口的な存在になるよう、取り組んでいきたいと思います。
外観
ー本日は貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございました。
取材・文:木本 拓郎 金剛株式会社 企画チーム
花巻市総合文化財センター
所在地:岩手県花巻市大迫町大迫3-39-1
TEL :0198-29-4567
開館時間:9:00~17:00
入館料:一般200円 小学生・中学生・高校生100円
休館日:年末年始(12月28日から1月3日)
URL:https://www.city.hanamaki.iwate.jp/bunkasports/bunka/sogobunkazai/1002065.html