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熊本県 清和文楽館
熊本県上益城郡山都町。
この山間の静かな町に建てられた清和文楽館は、九州唯一の人形浄瑠璃専用劇場を有する施設です。
人生の一部として継承されてきた清和文楽
清和文楽とは、この山都町(旧清和村)に脈々と伝わる人形浄瑠璃のことを指します。人形浄瑠璃とは文楽と同義です。
江戸時代の末ごろに巡業で訪れていた人形浄瑠璃一座からこの地の農民が人形を譲り受け、操つり方を習ったのが清和文楽の起源と言われています。
大人たちが互いの家に集まって人形の練習をしている様子を見ながら子供たちが育ち、やがて大人になって自分も人形を演じる・・・というように、人形は旧清和村の人々の人生の一部のように継承されてきました。
明治末期ごろには一時衰退しましたが、昭和天皇即位御大典の際に上演したことを契機に再興がはかられ、昭和54年(1979)には熊本県の重要無形文化財にも指定されました。
現在も20年前に立てられたこの清和文楽館で定期的(12月~6月は第2、第4日曜、7月~11月は毎週日曜)に公演が行われています。
人形遣いの中には、やはり普段農業をされている方もいらっしゃいます。
「三業一体」の芸の魅力
清和文楽館館長 渡邊 久さん人形が人生の一部になっているとはいえ、農業の合間を縫って練習や公演を行うということは大変なことで、清和文楽に対する並々ならぬ情熱がなければできないことではないでしょうか。
そんな情熱を掻きたてるほどの人形浄瑠璃の魅力とは、一体何でしょうか。
清和文楽館館長の渡邊久さんは、人形浄瑠璃の魅力は『難しさ』にあると言います。
人形浄瑠璃は「三業(さんぎょう)一体」の芸といわれ、人形遣い、三味線、太夫(語り)の芸がひとつになって出来上がる芸です。
さらに人形遣いには、人形1体につき主遣い(頭部分と右手の操作)、左遣い(左手の操作)、足遣い(両足の操作)の3人が居ます。
「それぞれの役割に難しさや奥深さがあり、それが人形浄瑠璃の魅力にもなっているのではないでしょうか。」と渡邊さん。
難しさを乗り越え、多くの演じ手の息が合って初めて完成する人形浄瑠璃。その1度きりの舞台にかける情熱や緊張感こそが、演じる人・観る人ともに惹きつけて止まない魅力の一つとなっているのです。
100年以上前の人形も現役で活躍
清和文楽に用いられる人形の頭は、館内の耐火金庫に保管されています。
木とクジラのヒゲ(バネ部分)によって出来ている人形の頭は、火の気に弱いため、厳重な注意のもとで現代まで守られてきました。
最も古いものでは、100年以上前に作られた頭もあります(右写真)。
なんとこの頭も、補修を繰り返しながらも、現在も舞台で使用されている現役の頭なのです。
実際に操作を体験してみると当然ながら難しく、人形遣いの方々の熟練度を思い知らされます。これまでこの頭を使って練習を重ね、舞台で演じてきた人々の熱が詰まっているように思いました。
観てもらうまでが『継承』。多くの人に観てもらうために
「演じ手がただ練習するだけでなく、劇場で公開し、お客様に見てもらわなければ継承はできない」と渡邊さんは語ります。
人に観てもらい、存在を知ってもらわなければ完全な継承とは言えない点が、清和文楽をはじめとする伝統文化の特徴であり、難しさかもしれません。
そこで、より多くの人に清和文楽を観てもらい、興味と親しみを持ってもらうために、清和文楽館では様々な工夫をしています。
古典芸能の演目等も多く、太夫の独特の語り口などもあり、一見難解に思われがちなお芝居を親しみやすくし、観客にわかりやすく演目を楽しんでもらえるようにするため、あらすじや登場人物について漫画で解説したパンフレットを作成しています。
また、小泉八雲の「雪おんな」を浄瑠璃に仕立てた、清和文楽オリジナル演目等も上演。
時には出張公演も行います。2013年3月には熊本県立劇場で公演予定です。(詳細はこちら)
後継者育成が今後の課題
そのような清和文楽についての評価は全国的に高く、時には県外からわざわざ見学に来る人や学校などもあります。
しかしその一方で、後継者不足が大きな問題となっています。
清和文楽館近隣の小中学校へ、出張授業をする活動等も精力的に行っていましたが、その後の進学、あるいは就職の際に町から出て行ってしまう子供たちがほとんどで、なかなか後継者の増加に結びつかないのが現状とのこと。
現在は人形遣いを担当する清和文楽人形芝居保存会の方々の人数も減少しており、登場人物の多い演目等は人手不足で上演出来なくなったものもあります。更にはメンバーの高齢化も進んでいるそうです。
来月2013年2月9日には熊本県立劇場にて「清和文楽人形芝居体験教室」も開催します。 (詳細はこちら)
「若い人が後継者として来てくれたら」と、渡邊さんは願います。
約150年の歳月を超えて続いてきた清和文楽と、それを受け継いできた人々の情熱が絶えてしまわないよう、少しでも広くその存在を語り継いでいきたいと思います。
このレポートが微力なりともそれに寄与できれば幸いです。
取材を終えて
人々の娯楽として根付き、伝えられてきた清和文楽には、他の文化とはまた異なる独特のあたたかみのようなものがあるように思いました。地域の人に愛され、支えられて現代にまで残ってきたものであるからでしょうか。
もちろん他の文化も多くの人に守られてきたものであることに違いはありませんが、清和文楽からはとりわけ、地域の愛好家の方々が力をあわせて伝えてきた一体感のようなものを強く感じた気がしました。
金剛株式会社 総務・人事・SRチーム 原田
清和文楽館
〒861-3811 熊本県上益城郡山都町大平152(道の駅 清和文楽邑内)
URL:http://seiwabunraku.hinokuni-net.jp/
TEL :0967-82-3001
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