矢印アイコン

PAGE TOP

  • LIBRARY

学生とともに〜進化を続ける近代の図書館〜

近畿大学 BIBLIO THEATER

 ※所属・役職は取材当時のものです。


アカデミックシアター設立までの経緯

岡室長(以下:岡)「プロジェクトでビブリオシアターの設計図面を見たときは驚きました。高さが4メートルもある書架をどういう風に使うのかわかりませんでしたし、そもそも『今までにない図書館』という感覚が掴めませんでした。
 最近は他大学でも図書館を新しくする取り組みがよく行われていますよね。そこで、私が図書館に戻ってくる以前の話し合いの中で、他大学を参考にし、近畿大学にも新しい図書館を導入しようという案が出たそうです。ですが、『それでは本当の意味で、新しい考え方を持った図書館ではない』といった意見もありました。そういった図書館をつくるとなった時、図書館職員の頭の中では、なかなか思い描くことは出来ませんでした。」

岡「東京丸の内にあった松岡正剛さんがプロデュースした書店『松丸本舗』に行ったことがありました。個人的にも気に入っていたので、あんな空間を作る方なら、いいものが出来るのではないかと思いましたし、イメージも湧きやすかったです。」

※松岡正剛……1944年京都生まれ。オブジェマガジン「遊」編集長、東京大学客員教授、帝塚山学院大学教授などを経て、現在、編集工学研究所所長、イシス編集学校校長。編集的世界観に基づく書物空間「図書街」や、本を媒介に知の相互編集を可能とする「目次録」構想などを推進。丸善・丸の内本店内に、実験的書店「松丸本舗」をプロデュースし話題となった。現在、帝京大学、理化学研究所、資生堂ほか多数の大学・企業・団体とブックプロジェクトを展開中。

時代をうつしだすアカデミックシアター

好きな場所で好きなだけ、が出来る空間

岡 「最近は『オシャレな空間で飲み物を飲みながら勉強をしたい』という学生も多いので、その要望を叶えるべく、ビブリオシアターでは、おしゃべりや飲み物の持ち込みを可能にしています。またアカデミックシアターにはカフェが入っているので、ビブリオシアターで勉強した後に気軽に食事も出来ます。こういったことは、隣の中央図書館では出来ません。図書館で一日中勉強したり、本を読んで過ごしたいという学生にとってはとても嬉しいことだと思います。」

岡「棚板にLEDライトや書見台、黒板を付けるなど、書架のデザインにこだわっている一方、机や椅子はシンプルなものにしました。加えて、机を退けたらイベントなどが出来るスペースが欲しかったので、移動が簡単に出来ることも考慮した部分です。
 また、空間をデザインする時、階ごとに家具を統一するという手法がありますが、そうはしませんでした。学生が好きな場所で好みの家具を選んで勉強ができるように、多彩な種類の家具を様々なメーカーから選び、それぞれの場所に配置しました。メーカーのショールームに足を運び、実際に机に触れたり椅子に座ってみたことで、質のいいものを選択できたと思います。」

漫画が担う「きっかけ」づくり

岡「2階の漫画については、取材などでよく取り上げられ話題となるのですが、2階に置いているのは漫画だけではありません。漫画の内容に関連する新書や文庫も、同じ棚に並べています。
 当初、図書館職員の間で、2階は新書の部屋にしようという案がある中、松岡さんから『新書・文庫に加え、漫画を置きたい』という意見が出ました。その結果、大学に漫画を置くことに関して、学内の図書館職員から懸念の声が挙がりました。大学の図書館は学修をする場所。また、近畿大学では漫画を専門に学ぶ学科もないからです。
 ですが話し合いが進む中で、漫画だけでなく、それに関連する新書や文庫も置くのならいいよね、ということになり、今の形が出来上がりました。
 理由としては、普段本をあまり読まない学生が、漫画をきっかけに関連本へ手を伸ばしてくれることを狙ったからです。漫画から関連本、さらにその他の本へと興味を誘う手法は、松岡さんの率いる編集工学研究所的に言う、『知のどんでん返し』です。ビブリオシアター2階の『DONDEN』とは、そこから名付けられています。
 まず最初の一歩として漫画、その隣の新書・文庫を、それから1階の単行本。最終的には隣の中央図書館へ、と流れていってほしいです。」

岡「漫画を読んで起業した社長さんや、漫画の主人公にあこがれてスポーツを始めた選手などもいらっしゃいます。学生に良いきっかけを与えられるなら、大学図書館に漫画を置いてもかまわないと思います。」

学生が利用しやすいアプリの活用

岡「アカデミックシアターのHPを作成する際、『いまどきの子はHPを見ないのでは?』という意見が出ました。ですので、学生が使用しやすいアプリを採用し、学生も一般の方も使用出来るようにしました。学生専用のメニューでは、ACTや自習席の予約が出来たり、ACTで開催されるイベント内容を見ることが出来ます。夏休み期間中も学生がアプリを使って、ACTをよく利用していました。
 またHPに関しても、ただのHPにするのではなく、『診断コンテンツ』を設置しました。AIの質問に答えると診断結果からビブリオシアター内のおすすめの本を紹介してくれるというものです。SNSと連携して診断することもできます。
 こうしたアプリや、HP、診断コンテンツをきっかけにして図書館に興味を持ってもらい、ビブリオシアターに足を運んでほしいですね。」


完成して、今感じる心の変化

本は絶対保存?考え直す本の扱い方

岡「アカデミックシアターのプロジェクトに携わっていたからか、従来とは違う角度から図書館を見るようになりました。ビブリオシアターは全面ガラス張りです。UVカット仕様のガラスを使用していますが、真夏の日差しは強烈 で、本の日焼けが懸念されます。しかし、本の日焼 けについても『図書館は本を保管するという役割もある。けれども、そうじゃない図書館があってもいいのではないか』と考えるようになりました。極端なことを言うと、本が日焼けしたって、汚れたっていいのではないか?、と。汚れたとしても、それだけ利用されているからいいんじゃないかと、思うようになってきたのです 。


これからのアカデミックシアターの形

学生に寄り添いニーズを吸い上げる

岡「学生の要望を考慮して考えたことも、学生が本当に求めているものとは少しずれていると感じることもあります。
 例えば、自習室には制限時間が設けてあります。それは学生の健康面や、他の利用したい学生を配慮した意味合いがあるのですが、『もっと利用できる時間を延ばしてほしい』『ずっと使っていたい』という学生や、制限時間後の休憩を挟んでもなお続けて予約している学生がいました。
 このように学生の求めていることを知るには、自分たちの頭だけで考えるのではなく、現場に行って、直接学生と話をしたり、様子を見たり等、学生に近づくことがすごく大事だと思います。
 アカデミックシアターが出来たことで、今まで学部棟の中で完結していた学生同士の交流が大きく広がりました。それによって私たち職員も新しい発見をすることも増え、学生がどういうことを望んでいるのかが、だんだん分かるようになってきました。これからも学生のニーズを吸い上げて、次に繋げていきたいです。」

近畿大学ACADEMIC THEATERの公式サイトはこちら 

PHOTO GALLERY

近畿大学「BIBLIO THEATER」

住所:〒577-8502 大阪府東大阪市小若江3-4-1
TEL:(06)4307-3109 (アカデミックシアター事務室)
開館時間:中央図書館HPの図書館カレンダーをご確認ください
休館日:上と同じ
URL:https://act.kindai.ac.jp/